わたしを離さないで/カズオ・イシグロ を読んだ話
わたしを離さないで
ノーベル文学賞受賞ということで、流行ってるし。
メディアは日本人日本人って喜んでるけど、別に日本語で書かれた本でもないらしいね。
製本の雑さ
本筋とは全く関係ないんだけど、本の作りが雑だよね…ページはめくるときにちょっとくっついてる感じがするし、本を上から見るとガタガタです。読むのにはほぼ支障は無いんだけどね。
ノーベル賞受賞ってことで話題になって、慌てて増刷したからなのかな?
内容
語り手である、中年の女性、キャシーが、自分の昔のことを回想していく形式です。
静かに回想していくんですよね。穏やかで、穏やかというよりもそこには感情の起伏がかなり乏しい(主観です)
全て過ぎて、もうどうしようもないと諦めている過去のことだからかな。
まるで、タイタニックのおばあさんみたいな。あんな感じです。
ミステリー本とかである、続きが気になって軽く読み飛ばしたくなるような、そういうのはなかったけど、面白かった。面白いというよりも、興味深い。
最初は漠然としていた"キャシーの過去"が少しずつ紐解かれていく、そんな感じでした。
ノーベル賞受賞の報道で、「臓器移植のためのクローンとして作られた子供たちをテーマに〜」っていう話をしていたので、なんとなく話は掴めていましたが、前情報が無ければもっとワクワクして読み進められた、かなって。
自由のあまりない、ヘールシャムという保護施設で育ったキャシー。
- ときたま出てくる「提供」というワード、
- 「あなたたちは身体内部の健康が大切なのだ」という先生の言葉、
- 異様なまでに外の世界から隔絶されている施設
この3点を除けば、序盤は、おそらくどこにでもある、児童保護施設で育った人の回想でした。
こう、臓器移植のためのクローンとして作られた子供たちの痛みと嘆きを書いた作品かと思ってたけど、それはちがって。
とにかく冷静に回想している、そんな雰囲気でした。
たまたま、育った場所がヘールシャム(孤児院)であって、たまたま臓器移植のための人間として生まれただけ、みたいな。
葛藤も勿論えがいてあったけれど、作者の伝えたいことを代弁させている言うよりは、本当に子供たちが語っているみたいな。
だからこそ余計に、ひとりひとりが普通の人間であることが強調されているなぁと。
面白かった。